初恋の実らせ方
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啓吾は帰宅と同時に英知の部屋に向かうと、ベッドに横になっていた彼の頬を軽く叩いて起こした。


「―――兄貴…?」


ボーッとする頭を抱えて起き上がった瞬間、英知は頬を殴られた。


強烈な痛みが襲い、英知は頬を抑えたままベッドの上に転がる。


「な、何…」


痛みを堪えながら英知が辛うじてそれだけ口にすると、啓吾は呆れたように笑う。


「俺のものに手ぇ出すんなら、これくらい覚悟しといてよ」


瞬時に昨夜のキスがばれたと分かり、英知は言葉を失う。
こんなふうに静かな口調で怒るときの啓吾が一番たちが悪いことを、英知はよく分かっていた。


二度としないから許してくれと懇願すれば、今回は大目に見てくれるだろうか。
いや、もしそうだとしても、英知にそんなこと言えない。


「―――俺、彩が好きなんだ」


英知は震える声で言った。


「知ってる」


あれだけ分かりやすい英知の気持ちに気付いてないのは、彩くらいだ。


「俺も好きだよ。
手ぇ出したやつを思い切りぶん殴るくらいね」
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