揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊦
「……食べないの?」


少し目を潤ませながら彼を見ていたら、ちらっと私を見上げて彼が尋ねてきた。


「えっ?あっ、食べる食べるっ」


同情の目で見てしまっていたのを悟られたくなくて、慌てて私はパスタに視線を向けた。

急いでフォークとスプーンで絡めていき、口へと運んでいく。


だけど、大好きなカルボナーラの味も。

今の私には、イマイチよく分からない。


「可哀想、とか思ってる?」


憐れんでしまっていた自分を責められているようで。

私は下を向いたまま、顔を上げる事ができなかった。


「思ってないよ」


まだ少ししか減っていないパスタを見つめながら、そう答える。

だけど、私の嘘はやっぱり簡単に見抜かれてしまうらしい。


「同情しなくていいから。可哀想だって思うなら、もう俺から離れないで?そしたら、俺はちっとも可哀想なんかじゃないよ」


そう言って、彼は優しい笑顔を見せてくれた。

私なんかより、ずっとずっと大人な顔を見せてくれる。


だけど、彼は決して大人っぽいんじゃない。

わずか11歳にして、大人になる事を強いられているんだ。


さっき彼に訊かれた宿題は、算数だった。

数学じゃなくて、算数。


その時、改めて彼が小学生なんだっていう事を思い知らされた。


大人びていたって、彼はまだ子供なんだって事を。
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