揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊦
私は、ただ黙ってそれを聞いていた。


笑顔で明るく話す先輩が、反対にどこか悲しそうに見えて。

ベッドから離れてソファに腰を下ろす彼を、じっと目で追い続けた。


「ある日、兄貴の事で相談があるって彼女に呼び出されてさ。気が付いたら…こういう事する関係になってたよ」


フッと鼻で笑うと、彼は背もたれに思い切り身体を預け。

顔を天井の方に向けた。


表情を見せなくなった彼は、もしかしたら…泣いてるのかもしれない。


「彼女は、俺の事遊びだったんだと思う。だけど、俺はまだガキだったからさ。兄貴にばれないようにこっそり会って、とにかく彼女を愛したよ」


正真正銘の、禁断の愛。

お兄さんの彼女と、そんな関係になってしまうだなんて……。


「でも、彼女のホントの本命は他にいたみたいでさ。結局は、俺も兄貴も捨てられて終わりだよ」


そう言って顔をこっちに向けた先輩は、自嘲するように笑っていた。


そんな姿を見るのは。

涙を流すのを見るより、辛いかもしれない。


「それからはさ、『女なんて信じねぇ!』って感じで。仕返しでもするかのように、たくさんの女とつき合ったよ。ナンパもしたし、ダチの女取った事もあった。女をその気にさせておいて、すぐに捨てる。俺がされた事を、いろんな女にしてきたんだ」


冷静に聞いたら、先輩がしてきた事は決して許されないはず。


だけど、何でなのかな?

そんな事をしてきた先輩が、何だか凄く可哀想だって思えてしまうんだ。
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