揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊦
「自分が一番大事で。その為には容赦が無くて。周りがどんなに傷ついても、自分は平気で」


次々と、先輩は言葉を吐き出していく。


先輩は、決してまどかさんという人の事を他人から聞いたわけじゃない。

よく知っているからこそ、彼女についてそう語っているんだ。


「誰…なの?あなた、一体誰なのよ?」


明らかに、まどかさんは動揺している。


初対面であるはずの人から出てくる言葉が、的確に自分を指摘している。

それがきっと怖いんだろう。


「6年も経てば、忘れちゃうんだな。俺は今でも忘れられずにいるっていうのに」


悲しそうな、それでいて呆れているような。

そんな弘登先輩の表情が、私に確信をもたらせた。


チラッと横目で真吾を見ると、彼もこっちを見ていて。

神妙な顔つきでゆっくりと頷いた。


今日、弘登先輩は真吾に会いに行ったから。

その時に話をしたのかもしれない。


「俺って、あんたにとってそれだけの男だったの?兄貴の方がやっぱり良かった?それとも…コイツの親父のが良かったわけ?」


悲しそうな、先輩の責める声。

さすがに、まどかさんは思い出したようだった。


「ひろ…と?弘登なの?」


信じられないといった顔で、腕を掴んでいる先輩の顔を見上げている。

そんな彼女を、弘登先輩は悲しげな眼差しで見下ろしていた。
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