愛かわらずな毎日が。

彼の指からこぼれ落ちる栗色の髪が、愛の紅潮した頬を隠すように揺れる。

幾度となく重ねた唇には甘い痺れが残り、彼を見つめながら繰り返す瞬きや呼吸には熱が残っていた。


そっと伸びた彼の手が触れるのは、細っそりとした愛の肩。

われものを扱うかのように優しく肩を撫でる彼の手の動きで、血色の良い愛の唇がゆっくりと開かれた。


「……福元さん」


「ん?」


「………好き。」


愛のその声が、表情が、彼の胸をくすぐる。

フッと目を細めた彼が、愛に覆い被さるように上半身を起こした。


「まだ足りない?」


「………えっ?」


テーブルランプによって淡いオレンジに染められた天井を背に、愛を見下ろす彼。


「愛の言ってた『足りない』って意味と。
俺の思ってる『足りない』ってのが、違ってたとしても」


「……………」


「そんなの、気にしてられないくらい」


「………え……、っと」


「俺は、まだ」


「………ま、だ?」


「足りない」


「………え、」


「愛のことが。愛が、足りない」


「………んっ、……っ」








おまけ『愛が足りない』 完. 2015.10.25

special thanks ‼︎ らぶはんたあ 様 , bhママ 様
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