愛かわらずな毎日が。

「で?なんて答えたの?」

資料室のドアにもたれ、腕組みをした福元さんが小首を傾げた。


「『あはは』…って」


「それだけ?」


「それだけ、……です」

そう言ってチラリと見た福元さんは、今にも吹き出しそうな顔をしていた。


「笑いごとじゃないですよ」

近くにあったロッカーの扉を意味もなく開けた私は、中に入っていた古びたパンフレットの束を眺めてため息を吐いた。


『私、見たんですっ!金曜日に、公園で。
……手、繋いでるところ!』


福元さんと一緒にいるところを、花見をしていた企画部の女の子たちが目撃したというのだ。

会社近くの公園だったということもあり、こうなることは想定内だったのだけれど。

なんていうか。

あまりにも突然のこと過ぎて、笑ってごまかすしかできなかった。


情けないけれど、逃げるようにしてその場を離れた私は、一刻も早くこのことを伝えなくてはと、ミーティング前の福元さんに電話をかけて資料室に呼び出したのだった。


「福元さんは、……誰かに、なにか訊かれたりしました?」

ロッカーの扉を閉めた私は、今度はロッカーの横に置いてあったダンボール箱に手を伸ばした。


「いや。まだだけど」

福元さんは、少し落ち着きなよ、と言うと組んでいた腕をほどいた。

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