はだかの王子さま
「まあ、普通基準がどこにあるか、果てしなく謎だけど。
 異世界モノの映画や小説の類だと、こっそりひっそり設定は、山ほど見るよね」

 でも、現実は『コレ』だからなぁ、って言いながら。

 新しく開けた南側の窓から、星羅はフェアリーランドの入り口辺りを見た。

 星羅が、あまり深刻そうでもなく『困ったなぁ』ってこめかみ辺りをポリポリ掻いている原因は、もちろん。

 フェアリーランドの入り口広場に、ど~~んと設置され。

 今なお、赤々とした火柱となり、燃え続けている、ビッグワールドへの扉のことだった。

 まだ、開園していないのにも関わらず、正面門(ゲート)から丸見えの勇姿に、みんな驚いている。

 星羅から返してもらったわたしの携帯で確認すれば。テレビもネットでも、フェアリーランドの特別企画について、ものすごく盛り上がってる。

 当然よねっっ!

 コレで実は、炎の扉の向こうに『ビッグワールド』って世界があるっての内緒、なんだって!

 本っ当にありえない!

「こんな風に、扉が堂々と置いてあって、大丈夫なの?」

 北塔の裏側から見ても、表と同じく、炎の幕に覆われた扉の枠が見え、その中にビッグワールドの夜が広がっていた。

「ビッグワールドの存在は、フェアリーランド運営陣や『協力者』にはバレてるんだけどね。
 一般に公になると万能エネルギー『グラウェ』の争奪戦になるし。
 本当は、なるべく秘密にしておきたい所だよね。
 でも、下手に隠すよりも、却ってみんなの目の前に出して置いた方がバレないもんさ」

 この件(けん)については、星羅は腹をくくったらしい。

 こっち側の警察と消防については、夜中のうちに、星羅が一緒に立ち会った状態で扉の視察を受けていた。

 消防も、警察も、この世に耐火の魔法というものがあるとも知らず。

 本物の火に触ったのに、気付かず。

 扉の火では、やけどをしないどころか、熱くもないコトを確認し、これは『進化した非常に高度な映像技術である』とお墨付きをもらってた。

 それから、あとは王さまが予定していた幻影のお掘りで周囲を囲み。

 さらにその周りを現実の柵で立ち入り禁止にしたんだけれども。

 扉が燃えているので、映像スクリーンは張れないのが判ると。

 星羅は大胆にも。

 扉自体は、一切隠さずそのまま放置することに決めた。
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