はだかの王子さま
 

 うぁぁ~~!


 一体ナニを言いだすのよ、このヒトは!

 あっ……いや、狼だっけ!?

 も~~どっちでもいいけど、星羅のお莫迦!!

 落ち着いてきたはずの、血圧が一気に上がって……わたしは、もう知らないっ!って、布団の中にもぐりこんだ。

「わぁ!
  もしかして、真衣怒った?
 え~~? なんで!? ど~~して!?」

 慌ててる星羅は、本当に判らないらしい。

 この、金色狼の天然ぶりは、

 ……それは、もちろん恥ずかしいからに決まってるでしょうが!

 と叫んでも、無駄なよーな気がする。

 代わりに、掛け布団から目元まで出して、ぎゅっと睨んだ。

「……それで、星羅は幾つになったんだっけ?」

 これは、こっち側の世界との習慣の差、なのかな?

 ビッグワールドでは『誕生日』には、こだわるクセに『年齢』はあんまり気にしないみたいだ。

 そう言えば、星羅だけじゃなく、お父さんの年も知らなかったな、と首を傾げれば。

 星羅は狼の眉間にうーーん、と皺を寄せた。

「やっぱり、そこ、聞く?」

「いや、誕生日だから、ふつう、聞くでしょう?」

 なにか、年を聞いて不味いことでもあるんだろうか?

 わたしの言葉に、星羅はますます困った顔をした。

「……実年齢聞いたら、あまりの年の差に、真衣に引かれたりして」

「大丈夫よ。
 だって、もともと、お父さんの同僚ってことだったじゃない。
 星羅が、ちゃんと大人だって言うコトは、知ってる」

 ……言動が、なんとなく子どもっぽいけど、ね。

 っていう言葉を呑みこんで、ココロの中で舌を出す。

 わたしの予測は、大体二十五、六から三十才……ぐらいまでだ。

 こっちに十年もいた挙句。

 ビッグワールドでもいろんなことをやっていたみたいだから、四十過ぎててもおかしく無いけど、星羅の肌は、若すぎる。

 じーっと見つめていると、狼の星羅は諦めたようにため息をついた。

「僕は、今年で……く、二十一、だよ」

「二十一! 何よ、思ったより若いじゃない……って!
 こっちに来たとき、十一才!?
 小学校五年か、六年生で……暗殺者、だったの?」

 わたしが、小学校一年の頃、初めて迷宮で出会った星羅は、獣のすがただったけれど、今と変わらない大人に見えた。

 

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