はだかの王子さま
 まだ、ヒューマンアウトが出来なくなったぐらいで良かった。

 もし、異空間にでも紛れ込んでいたら、取り返しがつかなかったと、ソドニは言う。

『それに、こっちの世界のグラウェの濃さときたら、もう!
 覇王さまにとっては、薄いのでしょうが、我々にはたまりません。
 王のお体に障(さわ)りますよ!
 私だって一年いればこりごり、もう、結構です!』

 ソドニに、ぽんぽん文句を言われて、王さまは、ぴこっとその耳を垂れた。

『なんか、ソドニ、強くなった?』

 なんとなく変わった王さまとソドニの関係に首を傾げれば、ソドニは笑う

『ええ。本日を持って、私の本当の主は、覇王さまですから。
 ビッグワールド王の命令は、本当は聞く必要はないんです』

『ふーん? そう言うモノなの?』

 良く判らないコトに首を傾げれば、ソドニは『はい』とうなづいた。

『覇王のナイトウマイさま、その剣のゼギアスフェルさまが、ビッグワールドにいらっしゃり、統治なさらない以上。
 次の統治者は、もう一本の剣となったフルメタル・ファングさま、ですが……これも、一年で去るそうです。
 さらにその次は、ぐっと下って一万年の転生とは関係なく。
 新たな『覇王さまの盾(たて)』となった、不肖(ふしょう)。私め、と言うこととなり、身分的には現ビッグワールド王と肩を並べることには、なるのです、一応』

『……身分が一緒になっても、ビッグワールド王の世話を今まで通りやいているんだ?』

 わたしが思わず聞いた言葉に、ソドニは、はぁ、どうも……と頭を掻いた。

『どうやら、私もヒトさまの上に立つのは苦手でして、王には向きません。
 それに世界に王は二人要りません。
 本気で私が王になるのなら、現王を殺さないといけないのでしょうが、そこまでは、さすがにいやです。
 覇王が現王を見捨てよ、と命令なさるならそうしますが……出来れば、私はビッグワールド現王をこのまま立てた状態で、彼の側に居たいです』

 そう言って、ソドニは頭を下げた。

『高慢で、きまぐれで、ど~~しょうもないわがまま王ですが、これでも、不器用で少しは優しい所もあるんです。
 現王が即位してから十年間。
 ビッグワールドでは特に大きな戦もなく、民も飢えない程度には暮らしております。
 これから、覇王にご迷惑をおかけしないように見張っておりますので、どうぞ、現王をご勘弁ください』
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