最弱暴走族と桜【完】SS更新中!
六日目*バカ野郎です。

その十六。



〝桜〟


〝……姫蝶?〟



あたしの目の前に立っていたのは金髪緑眼の同じ年の女の子、日向姫蝶(ヒュウガキチョウ)。



〝どうした?〟



あたしは華龍の特攻服を着ていて、姫蝶は普通の制服姿だった。


あたしが姫蝶に問えば姫蝶は暫く黙ってから静かに口を開いた。



〝桜は戻らないと駄目だ。大切な人達の所に〟


〝……いま、それを言うか?〟


〝アイツみたいに……〟


〝ならない〟



口を閉じた姫蝶に〝ならないよ〟と続ける。



〝あたしはあの時みたいな子供じゃない。今は戦える力がある。……それに、それを言うなら姫蝶もだろ?〟


〝………〟



あたしは〝彼〟ではなく今の姫蝶の大切な仲間を思い浮かべる。

その中にいる姫蝶。



〝彼はそう願ってると思うよ〟


〝…そ、う……かな…〟



ずっと自分を責め続けている彼女。それは痛々しいぐらいに。


それでも彼女には支えてくれる仲間がいる。

あたしにも。



〝この戦争。数年前みたいにさせない〟


〝…桜〟


〝あたしはっ!…もう、あんな光景見たくない〟



姫蝶の大切な人が死んだ数年前の戦争。

今回の戦争で、ああなるのがもし華龍のメンバーなら?七龍神の誰かなら?


もし、大和なら?



〝だから姫蝶。生きて〟


〝……〟


〝彼らの側で生きてよ〟



この戦争の相手。
夜闇は数年前、姫蝶の大切な人を殺したチームの生き残り。

姫蝶はこの戦争で自分が死んでも決着を付ける気だったんだ。


そんな事、させない。


あたしだときっと姫蝶には勝てない。それでもあたしは、まだそんな事をする気なら姫蝶を殴ってでも止める。


姫蝶を大切に思ってくれている人達はいるんだ。

その人達にあんな思いをさせるのは駄目だ。



〝…分かった。だったら桜、〟


〝……?〟


〝彼の気持ちも聞いてあげなよ〟



あたしは姫蝶の言葉に首を傾げる。



〝…姫蝶?〟



段々と白くなってくるあたしの視界。

真っ白になる瞬間、姫蝶は笑った。





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