Waver まだ見ぬ春


「いつ津波がまた襲ってくるか分からないから海に近づいちゃいけない」

私の大好きな居場所をもうこれ以上取り上げないで欲しいと思いながらも、大人の言うことは従わなくてはならなかった。

子供がダダをこねればいいってもんじゃない。
今は非常事態なのだ。

「出来る範囲でやれることを精一杯やればいいのよ」
お姉さんもそう言ってくれた。


海を遠目に彼を探す。



だがあの日の帰宅後、お母さんは思ってもみないことを私に言った。


「どこへ行っていたの?

学校のみんなが浜通りに集まっているわよ。急いで行きなさい!」

「なんで?」

「いいから!行けばすぐに分かるから」



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