僕はショパンに恋をした
シオンは俺に向き直った。

「本当に、僕、死ぬの怖くなかったんだ。」

手紙を握り締めながら言う。

「この手紙を読んで、おじいちゃんのピアノ、どうしても聴きたくなったんだ。」

俺は、シオンの言葉をじっと聞く。

まるで何かに祈るみたいな、シオンの言葉を。

「ひさぎがピアノを探すと言った時、そのピアノにあえたら、おじいちゃんの音を見つけられるかなって。」

「…見つかったのか…?」

またシオンは少し笑う。

「ひさぎが、さっきショパンを弾いてくれたでしょ?」

「シオンがショパンが良いって言ったからな。」

優しいねと、くしゃりと笑う。

「ひさぎのピアノを聴いたら、弾きたい気持ちを押さえられなく、なっちゃった。」

小さな子供の様に笑った。

「きっと倒れるし、こうやってひさぎに迷惑かけること分かってたけれど、どうしても弾きたかったんだ。」

強いまなざしで言った。
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