僕はショパンに恋をした
「リサイタルは、ほんの何曲かのソロだから。平気。」

俺は言った。

「でも、さっき…、倒れたじゃねぇか…。」

シオンは少し恥ずかしそうに笑う。

「あれは、かなり思い入れのある曲だったし、長いし、何より…その、すごくドキドキしてたから…。」

落ち着いて、前もって準備していれば大丈夫だと言った。

「本当は、オーケストラとやりたかったなぁ…。」

また空を見上げる。

本音なんだろう。

「無理なのはわかってるんだ。さすがにオーケストラと一曲弾き切るのが、無理っていうことは。」

視線を戻して言った。

「曲の冒頭だけオーケストラとやる、なんてことも無理だしね。」

それだけの為にオーケストラを呼ぶのはまず無理だ。

却下されるに決まってる。

「弾きたかったな…。」

俺はぐっと腹に力を込めた。

「…て…やるよ。」

「え…?」

「かなえてやるよ。お前の望み。」

シオンは瞳を揺らす。

「絶対にかなえてやる。」
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