僕はショパンに恋をした
シオンは立ち上がると、また深々と頭を下げる。

嬉しそうに笑う。

とても満ち足りた顔。

でも俺は気付いた。

少し肩で息をしているのだ。

慌てて反対の舞台袖に走る。

まだリサイタルは途中だというのに、観客から花束の嵐だった。

両手いっぱいに花をかかえて、花束に埋もれたシオンは、少し苦しそうだった。

「大丈夫か…?」

俺が聞くと、笑って言った。

「このお花、どうしようね。」

あいかわらず、すっ頓狂な奴だ。

でも、大丈夫そうだな。

「かせよ、持ってやるから。控え室に戻るぞ。」

俺は花束をがっさり抱えあげると、奥の控え室に向った。

シオンも後ろから付いてきた。

中に入り扉を閉めると、主治医が近付き、様子をうかがってきた。

「大丈夫。少し休憩すれば、平気だから。」

そう言って、ソファに座る。

予定では、今ごろ舞台のスクリーンに、前回のオーケストラとのリサイタル映像が流れているはずだ。

最初は、体力温存の為の、間繋ぎだったのだが、この映像を楽しみにしている人も少なくなかった様だ。

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