僕はショパンに恋をした
ピアノ越しにシオンを見る。

眉根を寄せているのが見えた。

どきっとした。

(あいつ、無理してやがる!)

俺の腰が浮きかけた時だった。

シオンが俺を真っ直ぐ見た。

わずかな、ほんのわずかな時間。

俺は何もかも分かってしまった。

だから、また座り直す。

シオンは、どんなことが起きようと、最後まで弾くつもりなのだ。

胸が熱くなった。

人の想いの何と熱い事か!

ただ黙ったまま、見守る。

結局見守ることしかできない。

人とは何と無力なものなのだ!

もし、いるなら神様、最後までシオンに弾かせてやって欲しい。

彼の澄んだ美しい願いを、どうか叶えて。

俺は祈らずにはいられなかった。

そしてシオンは、神に愛されているかの様に、最後の旋律をか奏で、静かに手を止めた。

シオンの浅い息だけが、耳に入ってきた。

俺は不安になって、今度こそイスから立ち上がる。

その時だった。
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