僕はショパンに恋をした
一色で塗り直す…。

「それって、簡単なようで、結構勇気がいるんだよね。」

確かに。虹を描いてるのに、一色だけ塗れと言われても。

「だから僕、水色で全部塗った。」

「水色…。」

「おばあちゃんね、それ見て、すごく褒めてくれたんだ。『雨がやんで、虹が出る前の一瞬の青空みたいだ』って。」

心の霧が、何か少し薄くなった錯覚。

「迷った時はさ、一番好きな色に、塗りつぶした方が良いんだって。」

簡単に言ってくれる。

「じゃないと、どんどんいろんな色を足してしまって、最後には、真っ黒になっちゃうよ。」

ずしんと響いた。

何か、俺は黒くなりかけているんじゃないか?

いや、もう真っ黒になってしまったのでは?

「ひさぎは、何色が好き?」

聞かれて困った。

好きな色は、特にない。

正直に言うと、シオンは別段どうということもなく言った。

「じゃあ、ひさぎも空色ね。」

…意味わかんねぇよ…。

そう思いながらも、俺は不思議と笑うことができた。

そして頭上の青空を見上げた。

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