先輩とあたし【完】

その夜はどうしても眠れなかった。

ジリジリジリジリ

いつの間にこんなに外が明るくなっていたのだろうか。
目覚まし時計が朝が来たことを知らせてくれる。

「もぅ!!モヤモヤするー!」
ベッドの上で大きな声で叫んでみる。
昨日の稲森先輩の言葉がどうしても離れない。
“お前の隣落ち着くわ”

忘れたくても離れなくて、嬉しいわけでもなくモヤモヤする。
嫌でもない。そんな自分が一番モヤモヤする。

私はとにかく忘れようと必死に他のことを考えた。

「おはよー」自転車のブレーキがかかる音が聞こえる。
パッと振り向くと喜村先輩の姿。

先輩を見た瞬間にモヤモヤしていた気持ちがぶっ飛んでいった。
「先輩!おはようございます!」大きな声で返事をする。
喜村先輩の笑顔を見ただけでこんなに心が華やかになるなんて…
この人はやっぱり王子様だ。

「田鍋はいつも元気だな!見てて元気なる」
先輩はわざわざ自転車から降りて私の隣を歩いてくれる。
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