先輩とあたし【完】


「伊織ちゃん~」部室で掃除をしていると稲森先輩がやってきた。
「どうしたんですか?珍しいですね、こんな早いのん」私はほうきで床を掃きながら口を動かす。

「今日は6限居眠りせんかってん。偉いやろ~」
「先輩、普通ですよ。誉めませんからね」私は先輩に変がおを披露する。
「ちぇっ。しかも変がおあかんわー伊織ちゃんもっと修行が必要やわ」
「うるさいですーそんな暇そうに座ってるんやったらコップ洗ってきてください」私はコップの入った入れ物を先輩に渡す。

「なあ、伊織ちゃん。手、どーしたん?」先輩は私の手のアザに気づいたらしく尋ねてくる。
「あーこれですか?さっきロッカーで挟んだんです!!」ニコっと笑うと稲森先輩も笑って部室から出ていった。

「私、笑えてるやん」窓に薄く写る自分に向かって独り言を吐いた。
部活が始まってからもみんなからアザのことを聞かれ、ロッカーで挟んだと告げた。
みんな、どんくさいなーってクラスのみんなと同じように言ってきた。
それが逆に私のその手の傷の真実を消してくれるようなそんな気がした。

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