木蓮の咲く頃 -春-
「一月四日、私は東京へ引っ越すことになってしまいました。うちの学校は、三年間クラスが変わらないから、最初はつまらなくて、ずっと同じメンバーなんてヤダよって思ってました。でも、皆と三年前から一緒に色んな事を協力してきて、ずっと同じメンバーじゃなきゃヤダよって思うようになりました。例えば、一年の時はまだ初めて会う人が多い中で、滋賀県へ一泊移住に行きました。慣れないメンバーで班を作り、山登りをしたり、カレーを作ったり、夜はクラス対抗でゲーム大会もして、自然と団結してたよね。クラスに慣れてきたと思ったら、太田と橋本のバカ二人が途中で学校を抜け出して大騒ぎになって…。」
皆のすすり泣く声が聞こえる。途中から私はそんな声も聞こえなくなり、いつの間にか柴穂の話は終わっていた。
「美亜里!」
突然私の名前が呼ばれる。
驚いて前を見ると、柴穂がこちらへ走ってくる。
私も自然と柴穂の方へ走り寄る。
「私の事、忘れないでね!?」
「忘れるわけないじゃん!!東京とかズルいよ!私の分も東京生活楽しみな!!」
私達は泣きながらお互いを抱き締めた。
 その後、柴穂は三年二組の教室を出ていった。

 その日の放課後、私は1人、ある教室にいた。
演劇部の部室だ。
私達三年が卒業したら廃部になる予定だった。
女優を目指していた私。この中学校に入学した頃から部員が少なかった演劇部に一人で入るのが嫌で、柴穂を無理やり一緒に入部させた。
最初は嫌がってた紫穂も、次第に私と同じ夢を抱いていた。
「廃部…かぁ。」
三年生になって、私と柴穂の二人しか部員がいなかった。
紫穂がいなくなった今、私達の卒業を待たずに退部するのは当然だろう。
「帰ろう…。」
私は静かに部室を出た。
< 4 / 5 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop