規則の守護者
4月。

高井瑞緒は、研究所で研修を受けていた。


被験町の地理の把握。

被験町の至る所に設置されている、観察カメラの傍受方法。

そして。

違反者を模した人形相手の、銃撃訓練。


「違反はあってはならない」


人形を視認した瑞緒の声は、ひどく冷たかった。


発砲なんて、常人なら躊躇するところだが、あいにく瑞緒は普通ではない。

彼女は何のためらいもなく腰から銃を抜き、引き金を引いた。


銃声と同時に、人形の手足が吹き飛ぶ。


その間、瑞緒の顔にも声にも、とりたてて感情は生じなかった。


無理もない。

違反をなくすのは、彼女にとって、ごく当然のことなのだから。


「……瑞緒。

これで研修は終わりだよ。

実地でも頑張ってね、期待してるから」


所長が、銃撃訓練を終えた瑞緒に声をかける。

はい、と瑞緒はうなずいた。



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