空の君へ〜命をみつめた真実のラブストーリー〜

温かい涙



もうすっかり木々に葉はなく殺風景

マフラーを巻いて登校する。
もうすぐ受験生……。


あたしの成績は順調にあがっていた。
この間のテストでは上位5位にまでなった。





「は~……」


「どうしたの? 絢。元気ないね」


「うん。風邪っぽくって、今日病院なんだぁ」


「早退?」


「うん……じゃあ、またね」





ここのところ熱っぽくて今日は頭が痛かった。

近くの、お母さんが働いている病院に行く。



病院

この独特な薬のにおいが大嫌い。
診察の結果、風邪……。

帰ろうとしたとき
目に留まった素敵な人……。






「お姉さん!」


「「あら、絢ちゃん」」






陽のお姉さん……紗雪さんと千紗さんが入院病棟に向かっていた。


知り合いの人のお見舞いかな?






「だれか入院してるんですか?」


「……っええ」


「どなたか親しい方のお見舞い……?」





いつも明るいお姉さんたちの顔が曇った。

……妙な胸騒ぎに襲われる。
もしかして。





「……隠しててごめんなさいね」


「えっ?」


「姉さん!?」


「千紗、黙ってて。絢ちゃん……陽が入院してるの」





お姉さんの真剣な瞳が強くなった。
嘘じゃない……。



すべてのつじつまが合った気がする。


学校に来なくなった理由も
あたしを突き放そうとした理由も






「なんの……病気……ですか……?」






おそるおそる聞くと、お姉さんは強い口調で答えた。
信じたくなかった。


そんなこと違うと……

でも、すべて事実





「癌……なの。発病したのは……1年の冬あたりだったと思うわ」


「助かりますか?」


「……ゆっくり話しましょ? カフェで」






お姉さんは近くのカフェにあたしを誘った。






「あたしは帰らないといけないから……絢ちゃん、お先にね、じゃあ……」





そう言って千紗さんは家に帰っていって、あたしは紗雪さんとふたり、カフェに向かう。


手の震えは止まらない。
陽が癌だなんて信じられない……

なにかの冗談であってほしい……。






< 212 / 253 >

この作品をシェア

pagetop