子猫が初恋提供します。
☆それは予期せぬ再会


『返して!それはパパにあげるの!!』


小さなあたしが走ってる。
追いかけてるのは可愛くラッピングされたピンクの箱だ。
あれは確か、前日にママと二人で大好きなパパの為に作ったバレンタインデーの為のチョコレート。


『取り返してみろよ!チービ!出来なきゃオレのもんだぞー!』


嘲る様に囃し立てる声に、手をぎゅっと痛いほど握りしめて、泣いてしまいそうになるのを必死に堪えていた。


『あんたのなんかじゃない!返して!!』

『ほら、パース!』

『ナイスキャッチー!』


首謀者の取り巻きがあたしの大切なチョコレートを宙にポイポイ放り投げる。


大嫌い、大嫌い、大嫌い!!!
パパ以外の男の子なんか本当に嫌い!
中でもアイツが大っ嫌い!!
中学生になってまでこんなことをする。人一倍体格のいいその首謀者を、あたしは思いっきり睨んだ。


『…っ、なんだよ…!』


ヤツが何故か少し怯んだ。
その隙にチョコレートを奪い返そうとしたけど、やっぱり届かなくて…。


『……っ』


もうダメ。泣いちゃう。
そう、下を向きそうになった。


ーーそしたら、

長い腕が伸びてきて、あたしの目の前にはピンクの箱。


『…ん』


ぶっきらぼうに差し出されたそれを呆然と見ていた。


ねぇ、待って。
あなたは誰だっけ?
知ってるはずなのに、あれ?思い出せないよ…。


ピピピピピピーーー!!
けたたましい目覚まし時計の音が、あたしを一瞬で現実に連れ帰る。

ぼんやりと目を開けると、重い身体を何とか起こした。


「はぁー…、久しぶりにやな夢見たぁ…」


アイツらの夢は久しぶり過ぎる。
…ん?あともう一人いたような…?


「……やばっ!時間!」


忘れた何かを思い出そうとしたけど、学校の用意にすっかり消えた。



ーーさっきの夢で察したかも知れないけれど、あたしには思い出したくない過去がある。

< 245 / 256 >

この作品をシェア

pagetop