簪彼女。
違う。
違うのに、……っ!
「――――………許さないんだから」
また。
私は何も、言えなかった。
ぺたんと尻餅をついてしまった私を見下ろす、未来ちゃんはまるで汚い物を見るかのように歪んでいて。
それを見上げる私の見る顔は、どれだけイビツなものなのだろう。
「…っ……、……」
いつの間にか出てきた涙。
「やだ、泣かないでよ。私が悪者見たいじゃない」
でも、止まらない。
ごめんねとも言えなくて、私は首を横に振る。
その反動で、簪が取れたのか――……パサリと髪が肩に落ちてきて、次いでカツンと簪がアスファルトの道に落ちた。
「あ、」
「なぁにこれ、キレー。やだ、貴女が持ってるより私がつけているほうが全然綺麗じゃない?」