簪彼女。



「じゃあね、また明日?……雪ちゃん」



「っ……あっ、」



簪、返して……!それは、それはお母さんから貰った大切な……!



「………っ、………や、そんな、っ……」



遠ざかる未来ちゃんの背中。


何も出来なかった。


大切な簪なのに。



返してって言えなかった。


手を伸ばせなかった。


後を終えなかった。


ただ情けなくて、悲しくて。


暫く、ぼたぼたと涙が溢れるのが止まらなかった。



どうしよう。


ねぇ、どうしよう。


………どうしよう、私は、どうしようもなく、弱い。




「たかはし、く、」



なんで、彼の名前を呼んでしまうんだろう。



弱いからって、味方になってくれるひとを都合良く呼んじゃ、だめなのに。



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