闇に降る雪のように

バックに入れている携帯が震えていた。


まだ葬儀までは、少し時間がある。


私は、お手洗いに行くと、側にいる親戚に伝え斎場を出た。



「・・・・・・もしもし」


「あ、晶子?大丈夫?」


「幹人・・・」


幹人の声を聞いて、私は涙した。

夫が死んだと聞いても、出ない涙なのに。


「ニュースを見て、晶子の・・・その・・・だんなさんが・・・殺されたって・・・見て」


幹人は、言いにくそうに訥々と話す。


「晶子が心配で、居ても立ってもいられなくて、電話したんだ」


私は、携帯を握りしめ、泣いた。


夫を亡くした悲しみの涙は出ないのに


幹人の声を聞いただけで、幹人の愛を感じて、自然に流れた安堵の涙だった。



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