新しい年は、愛しいあなたと
短編

新しい年は、愛しいあなたと

目が覚めたらもう夕方で、空には星が昇り始めていました。気だるい体を無理やりおこして、今まで体を入れていた炬燵から抜け出し、少し伸びをします。

今日の日付は12月31日、世に言う大晦日です。こんな日は誰かと一緒にいたいものですが、僕が今日一緒にいたい愛しいあの人は、今日は仕事でいません。僕と違ってあの人は地位が高いので、こんな日でさえ休みがとれないのです。
(でもあなたなら、もし会いたいと思ったら僕の都合も考えず会いにくるんでしょう?)
そう、会いたいと思ったのなら会いにいけばいい。仕事場に行けばきっとあの人はいるんだろう。ただ、迷惑がられたら、とか考えてこの家から踏み出せない僕が、臆病なだけ。
「あー、そろそろ年越し蕎麦作んなきゃなぁ」
そう呟いて台所に向かおうと思ったところで、玄関のインターホンが鳴りました。
「はいはい、今でますよーっと」
こんな時間に誰だろうと思いながら、がちゃり、とドアを開けると、そこに、いたのは、
「…え」
「えへ、来ちゃった」
…僕が会いたいと思っていたあの人で。
「お前と年を越したかったから早く仕事終わらせたんだぞ」
「…僕も」
「ん?」
「僕も、一緒に過ごしたいと思って、ました」
俯いて答えると、くしゃり、と僕の頭を撫でて、今日は遅くまで飲むぞー、と酒瓶を持ち上げました。
「…程々にしてくださいよ、」
今日は泊まっていくんでしょう?そう問いかけると、嬉しそうに頷く顔をとても愛しいと思いました。


12月31日午後6時36分、新しい年まであと少し。
僕は今、世界で一番幸せです。
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