名前の無い物語
「っ…ぅ…。」
頭を押さえた吉野
頬に何故か伝っている…涙
「何で…何で泣いてるんだ…?」
分からない
胸に…心に感じた幸せとか
映像に出てくる世界も、彼等も
知らない筈なのに…
「グルグル…混ざり合う記憶。」
一歩一歩と足を進めて
少女は吉野の顔を除き込んだ
「ほんとの君は…一体どっち?」
少女はクスリと笑って言って
顔を上げた
そのまままた笑って
少女は吉野に背を向けて歩き出した
「っ、待て…ーー!」
追おうと思った吉野を襲った、突然の突風
視界を遮られ、吉野は一瞬腕で防ぐ
風が止んだ時には
少女の姿はどこにもなかった