名前の無い物語

+心の片隅










視界に光が入る
急に入った光に、吉野は一瞬目を細めた


まだボーッとする意識の中
吉野はゆっくり起き上がる


白い床

白い壁


全てが白いその部屋に、吉野は見覚えがなく
首を傾げた


…どこだ、ここ?

てか、何があったんだっけ…?


「ぅ…。」考え始めた吉野の耳に届いた声
少し離れた所で、身体を起き上がらせる一人の少年


…誰?

吉野は視線を向けた
頭を抱えながら少年も視線を向ける

瞳が合った


「っ…吉、野…?」


瞬間、驚いたように目を丸くする少年
そんな少年に、吉野も驚きん隠せなかった


…誰だ?

知ってる…俺はコイツを知ってるんだ…


そう、大切な…


「海…?」

吉野の声を聞いた瞬間
海は吉野の下に駆け寄る

「吉野っ…!」

いきなり飛び付く海に、吉野は「うぉ!?」と驚いた


「良かった…本当に、良かった…。」

「海…?」

どうやら泣いてるらしく
吉野にはどうしたらいいか分からなかった


「吉野…?」

「マジかよ…。」

声に視線を向けると
こっちを見て、海と同様目を丸くしている…少年と少女


「空…柚歌!」

空と柚歌もすぐに吉野に駆け寄る


「吉野…助かったのね…!」

「心配かけさせやがって! 」


皆が涙を流しながら嬉しそうに言葉を言う
そんな反応に、吉野は何が起こったのか段々思い出してきた


「そうだ…!俺、確か黒蘭を倒して…。」


心が、壊れた筈…


なのに?


吉野は自分の手を眺めた

何で…?


「…お前を救ってくれた奴がいるんだ。」











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