恋するショコラ《完》


「あ、の、…本当に、ありがとう、ございました。た、助けて、いただいて。」


女の子は真人に頭を下げた。


「いや、それほどのことはしてないから。」


真人の口をついて出てきたのは、面倒くさがっていた真人の心とは裏腹に彼女をフォローする言葉だった。


「あ、の、お礼を、したいんです、けど、わたし…何も持ってなく、て。えっと、ごめん、なさい。」


女の子は今にも泣きそうな顔で目に涙を溜め俯きながら言った。


「いや、礼はいい。…それより、帰る場所はあるのか?」


真人の口からは彼女についての質問が出てきた。面倒なことに関わるのは御免だったのに、真人は自ら関わりを持ってしまったのだ。真人はその事実に焦ったが、時は既に遅かった。女の子は首を横にふった。


「じゃあ、しはらくここにいればいい。」


真人が後に引き返せなくなった瞬間だった。









※ビターチョコレート
甘さ控え目の少し苦味のあるチョコレート。



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