極力ノンフィクション
のばながさく

西山学園に入り1年が経ち勉強に退屈さを感じ始めた頃、藤原先生と出逢った。
楽しい授業と面白い話、先生に夢中になるのに時間はかからなかった。
好きで好きで堪らなくて....。
それでも先生は妻子持ちだから私からは声をかけないしアピールなんて以っての外。
だけど先生は私にばかり話しかけてきた。
授業中は主に私と話してた。
話しかけられる限り無視する訳にはいかなかった。

「白花ちょっと来て手伝って」

先生のいつもの台詞。
夏休みを終えた頃の暑い化学教室、
藤原先生の授業で実験をしていた。

「白花お願いこっちの試験管持ってて」

いつもの頼み事、だと思っていた。
私の左手に試験管を持たせる。
そして右手の小指同士をクラスの皆に見えないように繋いできた。
拒否出来る訳が無い。
左手には塩酸の入った試験管がある。
それよりも問題なのは私自身がいつかこうなる事を望んでいたこと。

「白花の持ってる塩酸は薄めてるけど
普通のは危ない、
手なんて普通に溶けるぞ」

と言って藤原は繋いだ小指を動かす。

「白花、それ持ってみてどう?」

「心底怖いに決まってるじゃないですか」

「やっぱりそうだよな、ごめんごめん」

そう言って先生は小指を離した。
薄めた塩酸を持たされた、ただそれだけだったけど既に心臓は壊れそうだった覚えがある。
その日の放課後から先生との関係は始まった。

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