龍とわたしと裏庭で⑤【バレンタイン編】
「だいたいね、みんな、わたしのコトとやかく言い過ぎじゃない?」

わたしはむっつりと言った。


「それはしょうがないよ。この町で羽竜本家って言ったら全ての中心だもの」

美幸が言う。

「圭吾さんは公平な人だけど、なにせ気性が激しいから。志鶴がちゃんと奥様に収まってくれなきゃ、みんな困るのよ」


「そうですね。一時期はひどかった――」


「美月!」

珍しく悟くんが声を荒げた。

「余計な事は耳に入れるな」


「いいわよ、薄々は知っているから」

わたしは手をヒラヒラと振った。

「圭吾さんにも、今の圭吾さんだけを見ていてって言われてるし。要するに、圭吾さんとわたしの仲がよければいいんでしょ?」


ぐるっと見回すと、みんながうなずく。


「わたし達はとってもうまくいってる。だから、個人的な事は追究しないで。嫌になって逃げるかも」


「――だそうよ、美月」

亜由美が言った。

「あんたのせいで志鶴が逃げたら、圭吾さんに生きたまま皮をはがれるわよ」


「もう何も言いません」

美月は両手で自分の口を塞いだ。

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