龍とわたしと裏庭で⑤【バレンタイン編】

放課後の学校は異様な雰囲気に包まれていた。

告白大会って感じ


廊下の片隅で、人気のない特別教室で、

頭をかきかきチョコを受け取る男の子

笑顔の女の子

友達の肩で泣く女の子


教室の窓からぼんやりと向かい側の棟を見ていると、わたしの横に美幸が並んだ。


「亜由美は?」

「義理チョコ配って歩いてる。十五、六個はあったよ」

「お歳暮みたい」


わたし達は笑った。


「学校中、バレンタイン一色ね」

わたしの言葉に、美幸が『そうね』と相槌を打つ。

「みんなきっかけが欲しいだけなんだよね。臆病な自分の背中を押してくれる何かって言うのかな」

「美幸は失恋した事ある?」

「あるよ。つらかったけど、この世の終わりって訳じゃない。志鶴は?」

「わたし、今まで恋をしたことないの」

「マジで? 彼氏いなかったのは分かるけど、誰にも? ちょっぴりドキドキとかもないの?」

「うん、まあ。今は圭吾さんにかなりドキドキしてるけど」

「じゃあ一生、失恋とは無縁だわ」

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