龍とわたしと裏庭で⑤【バレンタイン編】
なっちゃんは頭がよすぎてちょっと敬遠される。

わたしは――わたしは、目立たない子だった。


「三田さん? 帰ってたの?」

航太とふざけていた男の子が、わたしの顔を見て言った。

「なんか雰囲気変わったね」


えーと……この子、何て名前だっけ?


「変わんねぇよ。相変わらずボケッとしてるぜ」

と、航太。


ボケッとしてて悪かったわね


「何て言うのかな……柔らかい感じになった」

男の子はニッコリと笑った。


「ちょっと! 航太じゃん!」

「マジ航太だし!」

けたたましいはしゃぎ声。

あー、苦手だった女の子達だ……


わたしはちょっと後ろに下がって、名前を思い出せない男の子の横に並んだ。


あっという間に同窓会状態になって、参拝の列に並ぶわたし達は修学旅行みたいだった。


「しーちゃん、何お願いするの?」

前に並んだなっちゃんが肩ごしにきく。

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