龍とわたしと裏庭で⑤【バレンタイン編】
「たぶん床の上」


下着も?


「わたし……わたし達……」

「何もしてない」

「えっ? ホント?」

「僕が君を抱いてもいいかってきいたら、いいって言ったよね?」


覚えてないっ!


「でも、君は途中で完全に眠っちゃって。だから何もしてない。今、これからする?」


無理っ!


わたしは慌てて首を横に振った。


「残念」

圭吾さんはため息混じりに言った。

「すごく手触りのいい肌だったのに」


どこまで触ったのよっ!

いやいや、言わなくていい。聞くのが怖い。


「じゃあ、ちょっとだけ僕はいなくなるから服を着るといいよ」

圭吾さんはそう言って、起き上がった。

そして、鼻歌混じりに床から自分のパジャマを拾い上げる。

――誰かさんの羊、メーメー羊


夕べ思い出しかけた記憶が蘇った。

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