龍とわたしと裏庭で⑤【バレンタイン編】
「お前が自分からママの事を口にするのも初めてだと思って」

「ああ、ごめんなさい。ママの話をするのはつらい?」

「そんな事はないよ。お前がつらいのかと思ってママの話は避けていたんだ」


実は、ママの事はそれほど覚えていない。今までは、それを認める事が嫌だった。


「圭吾君とはどうだ?」


どうだって言われても……


「圭吾さんのこと、大好きだよ。親父の方こそ、さっき圭吾さんと二人っきりで何を話してたの?」


「お前のことだ。相変わらず『もっと早く結婚させてくれ』の一点張りだった」

親父は笑った。

「お前のどこがいいのかさっぱり分からん」


失礼しちゃう


でも、そうなのよね

圭吾さんは、わたしといると心が和むっていうだけだもんね

あっ、そうでもないかな?

『かわいい』って言ってくれるわ

それに……何度も本物の恋人同士になろうって誘われてるし

後は、わたしが『うん』って言うだけ


十分じゃない?

< 5 / 125 >

この作品をシェア

pagetop