龍とわたしと裏庭で⑤【バレンタイン編】
「ねえ、ねえ、悟くん! こういうのって、いつもはどこで売ってるの?」


悟くんはわたしが手にした小瓶を見た。


「店は女性用と一緒だよ」

「そっちの方がいっぱい種類があるわよね」

「OK――大野、しづ姫が化粧品を見たいって言うから、先にそっちへ連れて行く」


亜由美が了解というように片手を上げた。

「行ってらっしゃい。わたし達はこの辺をぶらついてる」



悟くんが連れて行ってくれたのは、ブランド化粧品を扱っているお店だった。

こんなところ、来た事ない。

美人なアドバイザーのお姉さんに『いらっしゃいませ』と言われた時点で、わたしの守備範囲を越えてしまっている。

一瞬、悟くんに話してもらおうと思った。


ダメダメ

わたしのプレゼントなんだから、自分で頑張らなきゃ


「あの……バレンタインデーにプレゼントする物を探しているんですけど」


ほら、言えた


「いろいろ取り揃えておりますよ。どうぞこちらへ」


お姉さんに案内されて、わたし達は奥の白いカウンターまで行った。

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