君とこんぺいとう
約束の木曜日。

仕事帰りに、私は田代くんと一緒に
桜並木で有名な公園に行った。

桜の下には会社帰りのサラリーマンやOLが集まり
夜桜見物をしていた。

「すごい人だな」

「本当だね」

私たちはぶらぶらと歩きながら
明りに照らされて幻想的に浮かび上がる桜を見ていた。

「あれ、里中じゃないか?」

ふいにそう言った田代くんの視線の先に
私は隼人と茜さんの姿を見つけて足をとめた。

うれしそうに隼人を見上げて微笑む茜さんと
彼女を気遣いながら歩く隼人の姿は
恋人同士のようだった。

「…田代くん、行こう」

私は思わず後ずさりしながら田代くんのスーツをつかんだ。

「分かった。あっちに行こうか」

田代くんが震える私の手をとって歩きだそうとしたとき
茜さんの声がした。

「萌さん?」

私はビクっとして体を強ばらせると
田代くんの陰に隠れた。

「隼人、萌さんよ」

茜さんはそう言うと隼人の手を引いて歩いてきた。

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