君とこんぺいとう
会社を出た私と里中は
駅の近くにあるイタリア料理の店に入った。

2人でいることに緊張しすぎて
私はシラフではいられなくなった。

「私も…何か飲もうかな」

「いいけど、大丈夫か?
お前、飲めないんだろ?」

私は渡されたメニューの中から
前に飲んだことのあるお酒を選んだ。

「甘いのなら少し飲める」

そう言って運ばれてきたカクテルを一口飲む。

(このお酒、思ったより強い…)

内心そう思いながらも、なんとなく「飲めない」と言えずに
私は食事をしながらカクテルを飲み続けた。

そのせいか、いつもより
ガードが緩んでいたのかもしれない。

私は頭の中で浮かんだ疑問を
そのまま口に出してしまった。

「里中は彼女とかいないの?」

自分のした質問に自分で驚いて
私は顔が熱くなった。

「あ、あのっ、答えなくていい。
ごめん、変なこと聞いて」

「別にいいよ。いま彼女いないし」

こちらが拍子抜けするほど
あっさりと里中は答えた。

「あ…そう」

「でも何でそんなこと聞くんだ?」

逆に質問されて私は答えにつまった。

「気になった?」

にやにやしながら聞いてくる彼の視線を避けるように
私は話題をそらそうとした。

「…ここのお料理…おいしい」

「ごまかすなよ」

里中はそう言うと私をジッと見てきた。

「小川は?彼氏いないの?」

私はその視線に耐えきれずに
視線をそらした。

「いるわけないよ。
仕事一筋だし、私なんて誰も相手にしない」


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