君とこんぺいとう
季節外れの春
花火大会の翌日の朝。

目が覚めると昨日の出来事が夢のように思えて
急いで携帯のメールを見た。

そこには、昨日別れてから
里中がくれたメールがあった。

『週末、楽しみにしてる』

(夢じゃないんだ…)

私はベッドの上でメールを何度も見返した。

昨日まで何も考えずに化粧をし、スーツを選んでいたのに
なかなか会社に行く準備がはかどらない。

何を着ていこうか、口紅の色はどうしよう。

そんなことを悩んでいるうちに
あっという間に時間は過ぎた。

いつもより遅めの時間に会社に着くと
もう田代くんが来ていた。

「小川、珍しく遅かったな」

「ちょっと寝坊して…」

準備に手間取ったとは言えず、私は嘘をついた。

「お、里中、おはよう」

田代くんの声に思わず私は振り向いた。

里中は私と目が合うと
昨日までとはまた違った柔らかい笑顔を見せた。

「おはよう」

「お…おはよう」

田代くんの手前、
私はドキドキしているのを悟られないように平静を装った。

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