君とこんぺいとう
文化祭当日。
クラスのこと以外やる仕事のない私は
ずっとお化け屋敷の受付をしていた。

「お、盛況だな~」

部活の出し物が終わった里中は
うれしそうに戻ってきた。

うちのクラスのお化け屋敷は評判がよく
常に列ができている状態だった。

「うん、やったかいがあるよね。
なんかうれしい」

私がそう言うと
里中は受付をしている私の隣に座った。

「小川頑張ってたもんな。
ほら、これやるよ」

里中は机の上に小さなかわいい袋を取り出して置いた。

「これ、何?」

しげしげと眺める私に彼は言った。

「こんぺいとう」

「って、あのかわいいお菓子の…?」

「こんぺいとうって言ったら
それしかないだろ?」

まあ、そうだけど、と思いつつ
私はそれを手に取った。

「これ、どうしたの?」

「かわいいだろ?
隣のクラスの出店で売ってたんだ。
小川への『頑張ったで賞』だ」

「それ…オヤジギャグ…?」

うれしさを隠すために
ついそんな憎まれ口をたたいた。

「失礼だな、誰がオヤジだよ。
俺がオヤジならお前はオバサンだ」

ムキになる里中がおかしくて
私は笑った。

「ごめん。でも、すごくうれしい。
ありがと」

その時、里中が急に恥ずかしそうにうつむいた。

「いや。そんなたいしたもんじゃないし…」

「そんなことない。大事に取っておく」

私がそう言うと彼はとてもうれしそうに微笑んだ。
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