君とこんぺいとう
「嫌だ」

隼人はますます私を強く抱きしめた。

温かい腕の中に包まれていたい。

そう思う気持ちを振り切って私は彼の腕を振りほどいた。

「一人に戻りたいの」

私がつぶやいた言葉に隼人のきれいな瞳が揺れる。

「もう隼人を待つことに疲れたの。
この先もずっと隼人は茜さんのところへ通うでしょ?
彼女から頼られたら、放っておけないはずだから」

(ごめんね、隼人)

心の中で謝りながら、私は隼人に嘘をついた。

「私、もう振り回されたくない。
自分の時間は自分で好きに使いたいし
隼人の都合に合わせるのは嫌なの」

最後の言葉を言うために、顔をあげて彼を見た。
隼人の傷ついたような表情が胸に刺さる。

「だから一人に戻りたい」

私の言葉に、隼人はしばらく黙っていた。

そして、とても長く感じられた沈黙のあとで
彼は静かに言った。

「萌の気持ちに
今まで気付いてやれなくてごめん」

隼人はそう言うと、悲しそうに私を見た。

「萌の気持ちは分かった。
でも俺にも考えさせてほしい」

コートを手に取ると、座ったままの私をおいて
隼人は部屋を出ていった。

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