屋上で


「はぁ、やっとまけた」




聞こえてきた声は懐かしい覚えのあるもの。
私が二度と忘れることが出来ないと思っていた声だった。




「――…かざ、かみ君…?」





喉が渇く。つっかえて上手く声が出ない。





「波里?」





ダッ




私は彼と目が会った瞬間、彼のそばを通り抜け逃げた。





「ちょっと千春!お弁当!広げたままよ!」





亜美の声が後ろから聞こえたけど、私には気にする余裕がなかった。



どうして風上君がここに居るの…?


やっぱり人違いなんかじゃなかった…風上君は私の知っている風上君だったんだ…
< 3 / 235 >

この作品をシェア

pagetop