年下のカノジョ~あの子は高校生~

9】わずかに動き出した運命

 松の内が明けるまで、夜の営業はいつもより1時間早く終わる。


 只今21:25分。

 着替えを終えても俺は帰らず、更衣室にあるパイプ椅子に腰を下ろしてぼんやりしていた。

 まかないの時間を思い出していたのだ。



「柏木さんの笑顔を独り占めしたいなんて・・・・・・。
 何であんなことを思ったんだろう」
 両手で頭を抱え込む。


 屈託なく笑う笑顔を見て、正直に可愛いと感じた。

 動物の赤ちゃんが持つ可愛らしさに、少し似ていたかもしれない。


 “守ってあげたい”と思わせるあの笑顔。

 俺が―――俺だけが守りたいと・・・・・・。


「だぁっ!
 もうっ!!」
 抱え込んでいた両手で、ワシワシと頭をかき乱す。
 

 そこに調度入ってきた赤川が、俺を見てぴたりと足を止めた。

「・・・・・・三山さん?」



「んあ゛?」
 かったるそうに奴を見ると、顔が引きつっている。



「―――なんだよ?」

「それはこっちが聞きたいですよぉ。
 どうしちゃったんですか?」
 ビクビクしながら、1歩ずつ近寄ってくる。


「俺だって分かんねぇんだよっ!」
 ぼさぼさ頭のまま、がっくりとうなだれた。



「分からないって、何がですか?」

 座っている俺を見下ろしているのが悪いと思ったのか、赤川もパイプ椅子を持ってきて、俺の正面に座った。



「もう、何が何だか・・・・・・。
 はぁぁ」


 俺は大きくため息を付いた。
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