年下のカノジョ~あの子は高校生~

10】ドサクサ紛れに抱きしめちゃった

 関東では冬の寒さが本番となる2月。

 あれから特に俺の中では柏木さんに対する気持ちの変化はなく、これといった行動を起こすこともない。

 確信の持てないまま、時間だけが過ぎてゆく。



 だけど。

 彼女の姿を探し出しては、目で追っている自分に気がついていなかっただけ・・・・・・。


 俺の知らないうちに、恋心は降り積もってゆく。

 ちらちらと舞う粉雪のように。




 2月の第1木曜日。

 俺は厨房ではなく、一人で事務所にいた。



「おはようございます」
 夕方からのバイトに現れた柏木さんが、事務所の中に向かって挨拶してきた。


「おはよ」
 事務椅子に座っていた俺はくるりと回転させ振り向き、挨拶を返した。



「え?
 あれ?
 ・・・・・・三山さんですか?」
 柏木さんの大きな瞳が更に大きく開いた。


―――ははっ、驚いてるな。
 
 くりっとした愛らしい瞳が、何度も瞬きを繰り返している。



 俺はビジネススーツではなく、おしゃれなスーツを身にまとっていた。

 髪型もばっちり整えてあって、いつもの姿とはまるで違う。


 山岸さんと店長に『ホストみたい~』と、褒められた(?)今日の俺。



「どうしてスーツ姿に?
 ・・・・・・あ、事務員さんに転職ですか?」
 真剣な顔の柏木さん。



「ぷふぅっ」 

 予想だにしなかった切り返しに、俺は思い切り吹き出してしまった。
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