☆一番星☆
「俺には絢華しかいない」


「……舜は兄弟いるの?」


「いるよ、兄貴が一人。絢華と同い年」


「そうなんだ」




今まで舜の家族のことを、ちゃんと聞いたことがなかった。


時折、舜の口から出る言葉に耳を傾けたことはあったけれど、あたしから聞いたことは一度もない。


どこか僻(ヒガ)んでいたのかもしれない。


大学が近いってのもあるけれど、いまだに実家に住んでいて、親の愛情をたっぷり受けている舜が羨ましかった。


あたしにはないものを、舜は持っているから。


でも……


舜がこんなにあたしのことを想ってくれているのに、あたしは何も返せていない。


だからあたしも、舜のために何かしたい。




「……会ってみる」


「ん?」


「舜の家族に、会ってみる」


「マジ?」


「うん」


「ありがとう!」




そう言って、舜はあたしをやさしく抱き締めた。
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