今までの自分にサヨナラを
優しくほんのりと甘い春風が吹いた。
新しい季節を運んで来た風は、私の頬を撫でやわらかな花を揺らす。
そうして、桜の花弁がはらり、はらりと優雅に踊りながら地上へと降りていく。
私はそんな散りゆく様を言葉もなく見つめていた。
美しいものほど、夢のような時間ほど、終わりを告げるのは呆気ない。
一夜の夢と同じ、何もその手の中に残るものはないんだ。
彼の存在は私にとって、いつもある太陽じゃない。
彼は、一瞬の夢、桜と同じだ――。
「さゆ、今日伝えようと思ってたことがあるんだ」