今までの自分にサヨナラを
すると、彼のスニーカーが白く輝いて、私の方へと踏み出されたのだ。
「――わかった。じゃあ、楽しもう」
明るくクリアに彼の声が流れてくる。
前髪をふわりとゆらす風よりも、軽やかでずっと爽やかに私の耳に舞い込んだ。
そうして彼が私の背後に回り込むと、車椅子の背もたれ越しに優しい温もりを感じる。
心臓は大袈裟に跳ねて体は自然とかたくなるのに、その温もりが全身を駆け巡って熱くなっていく。
「今日は俺が車椅子おすね。そうしたら、手繋いでるみたいじゃん?」
横を見れば、すぐに彼の悪戯っ子な笑顔があった。
頬が触れ合いそうな程、とても近くに。