ヘタレ王子とヤンキー姫
颯太は乱暴に扉を開けた。

「そう…」

母親が自分を呼んでも、無視して部屋にはいる。

3年前からずっと、この調子だ。


ある事件をきっかけに、颯太は家では、誰とも口を利かなくなった。

部屋にはいり、恵美からのメールに返信を打つ。

恵美や、樺音は颯太の過去を知っている。

きっかけは同級生と再会したから。

その人は、颯太を見ると少し切なそうな顔をした。

けれど、颯太は笑顔で、彼とはなし手を降って別れた。

いつものように他愛ない会話を打ちながら、ドアの外にある気配を睨み付ける。

「チッ。くそババア。」

恵美から着信が入り、颯太はわざとらしいくらい大きな声ではなし始めた。

まるで、ドアの外にある気配の侵入を拒むかのように。

恵美も、それがわかっているかのように、颯太が帰ったら何度も電話を掛ける。

けれど、春樹に出会ってからの颯太は、なぜか少し寂しそうな顔をするようになった。

樺音にも恵美にも、理由はわかっている。

素直なやつだからこそ、どこかに両親と和解したいという気持ちがあったのだろう。

それが、春樹の存在により色濃く現れてしまったのだ。
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