会いたい

 窓から差し込む赤紫が日の傾きを教えるまで、私と幽霊は無言の会話を続けていた。
 風が窓を揺らして、別れを催促しているようだった。

 もう 帰らなくちゃ

 紙に書くと、幽霊は頷いた。
 少し哀しそうに笑っていた。このまま帰るのが気が退けるほど。

「また、来てもいい?」

 私は紙を見せながら、ためらいがちに言った。
 幽霊は一瞬驚いた顔をして、それから、人懐っこい笑みを浮かべた。
 唇が動く。

「――」

き て  ま た き て

 私は、すごく嬉しかった。

「また、来る。必ず。来るわ」

 私が手を振ると、幽霊もひらひらと手を振った。
 嬉しそうに笑ってくれた。

さ よ な ら

「さよなら」

 私は上機嫌だった。
 私は、新しい友達ができた。しかも、彼は幽霊なのだ。
 幽霊らしくない、けれど、本物の幽霊。

 こうして、私と幽霊の奇妙な交流が始まったのである――

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