会いたい

哀しい時は、そう言わなきゃわからないよ。いつまでも、気づいてくれるのを待ってちゃ駄目だ。待ち続けて、お婆さんになったらどうする? 悔しいだろ?

 そう言った透の声を思い出す。
 でも私は今でもあの時のまま、何も変われない。
 変わることを恐れたまま、動けない。

 だって、透。あなたがいない。

 私は、あなたの前なら素直になれた。
 あなただけが私をわかってくれたから、あなたの前では私はわがままになれた。

 あなたの前でなら、私は私でいられたのに――


 
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